フュージョンエネルギーの実現に向けて、主体的に活躍できる環境がFASTにはある

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名古屋大学大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻の藤田隆明教授は、世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」の前身となる「JT-60U」で研究や開発をけん引し、世界のトップデータとなる実効エネルギー増倍率Q>1を達成するとともに、JT-60SAのプラズマ設計を主導したトカマクプラズマ設計の専門家です。FASTプロジェクトでは、学生時代からのライフワークともいえる核融合研究で培った経験を活かし、プラズマ設計のワーキンググループを取りまとめ、現在は工学設計を推進されています。

藤田先生がこれまでどのような核融合研究に関わってこられたのか、そして2030年代の発電実証を目指す産学連携プロジェクト「FAST」に懸ける想いを聞いてきました。

最初に核融合研究と出会ったのは学生時代です。東京大学の内田岱二郎先生・井上信幸先生の研究室で、小型トカマク装置TORIUT-6や逆磁場ピンチ装置REPUTE-1などでのプラズマ実験を行っていました。

博士課程を修了した後、1年間研究生として日本原子力研究所のJFT-2Mトカマクの実験に参加しました。その後、九州大学応用力学研究所に助手として採用され、超伝導強磁場トカマクTRIAM-1Mでプラズマ計測などを担当しました。再び、日本原子力研究所(その後、日本原子力研究開発機構、現在は量子科学技術研究開発機構)に移ってからの20年間は、大型トカマクJT-60Uでのプラズマ実験研究やその後継装置となるJT-60SAの設計検討活動を行っていました。

現在の名古屋大学工学研究科では、学部生・大学院生の教育を行いながら、小型トカマク装置TOKASTAR-2を用いたプラズマ実験やプラズマについての数値シミュレーションなどを行ってきました。振り返ると、学生時代から一貫してトカマク装置でのプラズマ実験研究、トカマクプラズマの数値計算研究やトカマク装置の設計活動などトカマクに関わる研究を行ってきたことになりますね。

現在の量子科学研究開発機構(QST)に勤めていた時にJT-60Uのプラズマ内の磁場を計測してプラズマ電流分布を求める測定器の開発を担当し、従来とは異なる電流分布を有する「負磁気シアプラズマ」の開発を主導しました。負磁気シアプラズマは磁力線のねじれ方が通常とは逆にプラズマ中央部で弱くなる状態で、 安定性を保つのに微妙な調整が必要なのですが、非常に高い閉じ込め性能を得ることができます。その特徴を活かして実効エネルギー増倍率Q>1を達成することができました。またこれに関連して、負磁気シアプラズマで現れる極めて強い内部輸送障壁(断熱層) の特性についての研究や、負磁気シアの極限としてプラズマ中央に電流の流れない電流ホールと呼ばれる状態についての研究も行いました。

その後、JT-60SAの設計では、設計活動の管理を分担するとともに、プラズマの断面形状の制御やプラズマの運転シナリオの作成、プラズマ加熱装置の仕様の検討などを行いました。今現在も世界最大のトカマク装置であり、日欧の共同プロジェクトであるJT-60SAの設計に関われたことは、研究者冥利に尽きるものでしたね。

名古屋大学に移ってからは、小型トカマク装置を使い、磁力線に少しだけねじれを加える「局所ヘリカル磁場」を印加することによるプラズマ垂直位置安定化の研究や、トカマクプラズマをシミュレーションするコードの開発、またそのコードを用いたJT-60U実験における金属(タングステン)不純物輸送の解析や、核融合中性子源の概念設計研究などを行いました。

内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」の目標10(フュージョンエネルギーの多面的な活用)に、球状トカマクでの核融合中性子源の開発プロジェクトを提案することになり、そのプロジェクトにメンバーとして関わっていました。残念ながら提案は不採択となったのですが、その提案のために行われた検討をベースに、民間企業も参画したFASTプロジェクトが立ち上がることになりました。

FASTは、核融合出力の長時間維持の早期実現を目指した大変魅力的なプロジェクトであり、かつ産学連携による新しいプロジェクトということで、自分にも主体的に活躍できる部分があると思いましたので、参画することにしました。

FASTプロジェクトでは、いくつかのワーキンググループ(WG)が設けられており、私はプラズマ設計WGの取りまとめをしています。

現在のFAST装置は、装置の大きさや大まかなパラメータを決定する概念設計段階が完了し、工学設計を進めているフェーズです。プラズマ設計WGでは、想定したプラズマサイズ、プラズマ電流で、核融合出力50MW、プラズマ電流維持時間1000秒などの目標性能を達成できるのかどうか、あるいはそれらを達成するために必要な加熱装置などの仕様を、プラズマ物理の観点から検討しています。

また、プラズマの断面形状などについて、プラズマを取り囲む機器や磁場コイルなどとの整合性を取るために、それらの機器を担当するメンバーと議論しながら設計の検討を進めています。

大学時代から自身のライフワークとしてフュージョンエネルギーの研究に取り組んできましたが、その実現は学生時代に思っていたよりも遅れているのが現実です。こうした状況で、あと10数年の間に、かつ日本国内で、フュージョンエネルギーによる発電を実証できる可能性が出てきたことに高揚感を覚えます。

FAST装置は私がこれまで設計活動に関わったJT-60SAと同じくらいのサイズの装置のため、今後どのような観点での検討が必要になるかなどについて、私の経験を活かせることが多くあると思っています。長年にわたり核融合開発に携わってきた経験を充分に活かし、FASTプロジェクトの具体化、そしてその先の成功に向けて貢献したいと考えています。

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